近年、日本でも問題になっているヤングケアラーですが、このヤングケアラーという言葉もイギリスが発祥ですよね。イギリスって、子どもの人権が守られていて日本よりも進んでいると思われがちですが、いまだにそういうことが解決していなくてすっぽりこぼれ落ちている子たちがたくさんいるわけです。そう考えた時に、同じ経験をしている2人を走らせてみたいと思ったんです。
それとミアは、まるで両手に銃を構えているくらいに武装して誰にも頼らないで生きている子です。彼女が書くラップの歌詞でも「二丁の銃を構えて立った」とか物騒ですが、結局これってミアがトカレフという銃で撃ってやりたいと思っていたことを言葉に変えていく話だと思うんです。
金子文子はつらい境遇を自伝にしました。そのことに触発されて、ミアもラップで自分の言葉を紡ぎ出したわけです。貧困やヤングケアラーについて書きたかったのはもちろんなのですが、私自身も本書を執筆しながら改めて本や言葉の大切さを感じました。本で人生が変わるってあると思うんですよね。『両手にトカレフ』が、誰かのそんな一冊になれたらいいなと思っています。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERA 2022年8月15-22日合併号