「歌詞に歌われていない曲全体の感情、物語のようなものを読み取ることができる大切な部分です。そこも含めて聴くことで、頭の中で映画のような作品として受け取ることができる気がします」
だが、そもそも、エレキギターを前面に出したロックは、世界ではすでに主流ではなくなっている。米ビルボード誌が発表した21年に米国で売れたアルバム200枚の中に、ロックの新作が一枚もランクインしなかったことも話題となった(クイーンやジャーニー、ニルヴァーナなど過去の名盤は数枚ランクイン)。
音楽評論家の原田和典さんは、ギターソロやイントロが軽視される風潮についてこう語る。
「ギタリストがステージ上でヴォーカリストと肩を組んでプレイしたり、モニターに片足を乗せて超絶テクニックを延々と披露したり。そういうアピールでの盛り上げも、すっかり見なくなった気がします。ギターにはリズム楽器、コード(和音)楽器としての役割もあって、最近はそこに需要が高まっているようにも思われます。いかにかっこいいコードや歯切れのいいリズムを刻んで歌を引き立てるか。そんな“薬味”としての効果が、さらに求められていくことでしょう」
前出のシマさんは、若者世代の時間感覚の変化も指摘する。
「SNSやゲームに割く時間も増えているでしょうし、そうなると、ただただ音楽にひたるのではなく、生活の一部としてスマホをいじりながら楽しむものという位置付けになっている気がします」
1本の映画を10分程度に縮めてまとめる「ファスト映画」や、録画したドラマを1.5倍速で見たりする感覚と通ずる部分もあるかもしれない。
「全体的に“はしょって”楽しむ傾向はありそうですね。今はイントロもなくいきなりサビから始まる曲も増えてきていますが、そういう曲を聴き慣れている人たちにとっては、イントロや間奏の存在は、まどろっこしい部分があるのかなという気もします」(シマさん)
原田さんも「ファスト文化」の影響を指摘する。