週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より

 たとえば週1回、町内の4施設で行われる「地域健康教室」。毎回多くの町民が集まり、体を動かす。高度成長期に多くの住人が移り住んだニュータウン地区には、集会所や町おこしカフェ、シェアオフィスなどを集めた施設「コミュニティ・マルシェ」が2017年に開設された。

 施設内のカフェでは趣味や特技を商品として売ることができるショップも併設されている。

 公共交通が充実しておらず、「陸の孤島」と揶揄(やゆ)される半面、町民は原則、町内のどこへ行くにも1回200円の「はとタク」を利用できる。

 手押し車を使って「マルシェ」にやってきた92歳の女性は、15年ほど前に夫を亡くして現在はニュータウンで一人暮らしをしているという。

「今日は買い物よ。あとはね、ちょっとおしゃべり(笑)。お友達とお茶飲んでね。そういう場所があるのは幸せね。はとタクのおかげでこの年になっても動けるのよ。そういう意味では幸せだと思うわ。この年でお友達にお茶に誘われるのって、幸せなことよ~。なるべく出歩いて、お話しして、足腰と頭を使ってる。コロナで子供や孫が来られないことだけが幸福とはいえない点ね」

 ニュータウン地区で飲食店を経営している70代後半の女性は「コロナで商売は上がったりだよ」と言って笑う。店まで案内してもらい店内で話を聞いた。

「夫がこの店を残してくれて、常連さんがいまだに来てくれるのは幸せだよ。それから同級生はみんなもう定年で引退しているけど、私はこの年でまだ働けるからね。それも幸せだね。儲(もう)かってはいないけど(笑)。いまだに店に来てくれる常連さんと話すのが一番の楽しみ。それができるのも店をやっていたから。ただね、コロナ前は宴会もちょくちょくあったわけよ。宴会は楽しいね、儲かるし(笑)。人と人の距離を遠ざけるコロナが早く収まるなら、足腰が立つ限りまだ店を続けたいね」

 年齢を重ねても幸せでいるために、地域のコミュニケーションが大事だと痛感した。

 あなたはどんなとき、どんなことに幸福を感じ、今はどれだけ満たされているだろうか。自分だけの「黄金比」を見つけよう。(本誌・鈴木裕也)

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