この動きを後押ししたのが、文鮮明氏が反共を旗印に68年に設立した政治団体「国際勝共連合」だ。勝共連合は各地の大会で「スパイ防止法を推進する議員を当選させよう」と呼びかけた。結果は、自民党の圧勝。朝日ジャーナルの記事では、勝共連合が応援した130人の候補者が当選したことを報じている。
<ダブル選挙開票日の翌日、統一教会とかかわりの深い日刊紙『世界日報』に「勝共推進議員一三○人の当選を祝す」という勝共連合の一ページ広告が載り、当選したばかりの衆参両院議員の名前が並んだ。
それによると、(中略)今回の選挙では「全力をあげて推薦議員の当選を期して戦い、その結果、本連合特別会員および顧問一三○人の当選をみるに至りました」となっている>
全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士がこう説明する。
「勝共連合の共産主義反対という趣旨に賛成する議員たちが、選挙の応援を受けていたのです。運動員を動員して、無償で秘書も提供して後援会もつくる。その代わり、議員は統一原理の講義を泊まり込みで受けたり、イベントに参加したりする。それをいまでもやっているということです」
政治家との関係は連綿と続いてきたようだが、教団に衝撃を与える事件が起きる。2009年、「先祖の因縁がある。印鑑を買わないと命がなくなる」などといって高額な印鑑を買わせた疑いで印鑑販売「新世」の社長らが警視庁に逮捕され、教団の渋谷教会など関連施設が家宅捜索を受けたのだ。東京地裁は社長に対し、特定商取引法違反で懲役2年(執行猶予4年)、罰金300万円の判決を言い渡した。霊感商法で同法が適用されての懲役刑は初めてだった。
前出・有田氏が語る。
「教団は新世事件から、本部教会が摘発される日が来るのではないかという恐怖感を抱き、『有力議員への働きかけ』などの対策を強めていったのではないかと推測します」
連絡会によると、1987~2021年に連絡会や消費者センターに寄せられた相談件数は3万4537件。被害額は1237億円に上る。被害は際限なく深い。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より抜粋