今のお仕事のように見えているものをやるのではなく、本当に何一つその時の自分が分からない。だからこそ、ワクワクするんやとも思います。もちろん、この転機で人生がエライことになるのかもしれませんけど、それも含めて進むなら背負わないといけない。

 30年ほど芸人をやってきて、そら、芸人の世界を出る寂しさはあります。でもね、寂しさがあるからと言ってそのままやったらそのまま。もし次の何かを求めるんやったら。今の状況のまま新しいことも欲しがるのは虫が良すぎる。仲間と離れたり、収入を失ったりするリスクを背負わないと次のものは得られないと僕は思うんです。

 芸人を目指した時はワクワクだけで飛び込みました。今考えたら「よくワクワクだけで飛び込んだな……」とも思うんですけど(笑)、ただただ芸人の仕事がカッコいいと思ったから飛び込んだわけです。それと同じくらい今はワクワクしています。それと同時にドキドキもものすごいです。守るべきものがあるがゆえに。

 ただ、これはホンマにありがたいことですけど、辞めることを伝えた芸人仲間、先輩方から心が震えるような言葉ばかりをいただきました。そんなんね、僕が辞めるなんて別にどうでもエエことやのに、本当に温かい言葉ばっかりでした。

 その言葉に恥じないように。そして、それだけの思いに報いるためにもなんとか頑張ろうと思っています。…なんか真面目な話になってしまってますけど(笑)、ただただそう思っているんです。(中西正男)

■たむらけんじ
1973年5月4日生まれ。大阪府阪南市出身。大阪NSC11期生。同期には陣内智則、ケンドーコバヤシ、「中川家」らがいる。92年にお笑いコンビ「LaLaLa」を結成するも、99年に解散後はピンとして活動。2006年に自らがオーナーを務める「炭火焼肉たむら」を開業。芸人と社長、両方の顔を持つ実業家芸人としてブレーク。MBSテレビ「せやねん!」、ABCテレビ「おはよう朝日です」、関西テレビ「よ~いドン!」、読売テレビ「大阪ほんわかテレビ」などレギュラー多数。

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