中国から渡来した漢字ですが、もとからある日本語に無理やり当てたり、場合によっては日本で新しく字が作られたりすることもあります。言葉のうんちくを紹介します(朝日新聞出版『みんなの漢字』から)。
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■薔薇(ばら)
「薔」と「薇」の二文字をまとめて訓読みしている
もともとは、とげのある小さな木を総称して「いばら」「うばら」「むばら」といい、頭の「い」「う」「む」が省略されて「ばら」になりました。漢字は中国で同じ意味を表す「薔薇」を当てています。つまり「薔」を「ば」、「薇」を「ら」と読むのではなく、二文字をまとめて「ばら」と訓読みしています。音読みは「しょうび」「そうび」です。このように、二文字以上の漢字をまとめて訓読みすることを「熟字訓」といいます。もともとある日本語に、中国語の漢字を当てたものです。
■空豆(そらまめ)
さやが蚕に似ているので「蚕豆」とも書く
豆の入ったさやが、空に向かって直立するように実ることが名前の由来です。漢字では蚕豆とも書きます。これは、中国で空豆を表す漢字で、さやがさなぎになる前の蚕(かいこ)に似ていることから、「蚕」の字が用いられています。
■山茶花(さざんか)
山地で育ち、葉がお茶と似ている
中国でツバキ類全般の花を指す「山茶花」が、日本では特に「さざんか」に用いられています。中国で、山地に自生し、葉をお茶のようにして飲めることから「山に生える茶の木」という意味で「山茶」、その花を「山茶花」と表しました。それが日本に伝わり、当初は漢字の通り「さんさか」「さんざか」と呼んでいたのが、いつしか「さざんか」に変化したといわれています。
■昆布(こんぶ)
幅が広いため「広布」と呼ばれた
アイヌ語で昆布のことを「水中の石上に生ずる草」という意味の「コンプ」といい、それが広まったといわれています。また、古くは昆布のことを幅が広いことから「広布(ひろめ)」といい、「広布」が音読みされて「こうふ」となり、「こんぶ」に変化したとする説など、語源は諸説あります。蝦夷地でよく取れたことから、「夷布(えびすめ)」ともいわれていました。「昆布」の漢字は中国から伝わったとされています。