
“何もできないリーダー”かな。ナミ役の明美ちゃんからも「船長が決めてくれればみんな納得しますから、最終的には船長が決めてください」と言われたことがありましたが、何もできなくても、私が大事なときに何かを決断しなきゃいけないなと思うこともあります。ほかに劇団の座長などもやっていますが、リーダーを務めるうえで、『ONE PIECE』の作中のセリフに支えられてきました。ルフィのセリフに、「俺は剣術も使えねェんだコノヤロー!航海術も持ってねェし!料理もつくれねェし!ウソもつけねェ!俺は助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!」という言葉があります。それまでの私は、歌って踊る劇団の座長として、歌も踊りもできなきゃいけないと思っていたのですが、ルフィを演じるようになってからは、「わからないから教えて」と言ってもいいんだと思うようになりました。仲間を頼れば、「俺がいなきゃ、私がいなきゃダメなのね」って思ってくれるようになるんです。振り付けの人も、「真弓はなかなかできないからちゃんとやってあげなきゃ」とみたいに思って私を支えてくれます。
――田中さんも仲間たちに支えられているんですね。
例えば、私は着るものに疎くて、何を着ていいのかわからないんです。ある仕事の時、「カジュアルでおしゃれな感じの自前の服で来てください」と言われたことがあって、私は「わからない~」ってお手上げ状態。そういう時に、勝平やチョッパー役のいくちゃん(大谷育江さん)が助けてくれて。「船長、こういう時はこれを身に付けてください!」ってアクセサリーまで貸してくれて、全身勝平の私物だった時もあります(笑)。作中の麦わらの一味もみんな、「俺がいなきゃあいつはダメなんだ」「私がいなきゃダメなんだ」と思って、リーダーであるルフィを支えています。仲間たちにそう思わせるようなリーダー像は、ルフィと尾田っちの描く物語から学ばせていただきました。
《後編へ続く》「少年役はルフィで最後にする」『ONE PIECE』声優・田中真弓が語る「最終回までの目標」
(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)