飯塚:でも、絶望と取る人もいまして……。子どもを作るために、真也はそこまで頑張らないといけないのかって。いろんな捉え方があっていいと思っているので、それでいいんですけど。
坂東:ああ~。確かにびっくりはしましたよ。台本読みながら、最後のページをぺらっとめくったときに、「おお!」って。最後のシーンは、衝撃的ではありますよね。
飯塚:多分ね。見たことない映画だとは思う。
坂東:僕自身は、目の前には光があって、その方向に歩いていけば希望につながるんだよ、というのを、この映画は伝えられるんじゃないかと思ってます。
飯塚:ソウル国際プライド映画祭でこの映画を上映したんですけど、韓国の、おそらくセクシュアルマイノリティーの方から、「とても希望を感じた。ありがとうございます」ってメールをもらって。この映画を作ってよかったなと思いました。
■ハッピーしかない世界
坂東:そもそも、何がマイノリティーで、何がマジョリティーなのか。多い、少ないで分けるのもおかしいですよね。それを決めた条件と基準は、結局お前だけの価値基準だろうって。
飯塚:究極的には、セクシュアルマイノリティーとか、マジョリティーとか、そういうことすらなくなってしまえばいいとは思いますね。誰もが人と違う部分や特徴を持っていて、みんなマイノリティーの部分がある。カテゴライズせず、一人一人の形が認められる社会になったら、どんな人でも自分の形で生きていけるし、楽しい世界になる。
坂東:その先にはハッピーしかないですよね。結局、決めつけたり、カテゴライズしたり、差別したりすることでアンハッピーが生まれるわけで。この作品がきっかけになって、それに気がついて、時代がもっといい方向に変わればいいなと思いました。誰もが「これが本来の自分だ」って言える世界になってほしいし、周りもそれを肯定できる人が増えればいいと思う。
飯塚:うん、そうですね。そしてシンプルに、一緒にいたいと思う人が一緒にいられるようになればいいなと思う。まだ日本では、同性婚すら認められていないですから。そんな世界を僕は見てみたいです。
(構成/編集部・大川恵実)
※AERA 2022年1月3日-1月10日合併号