トランスジェンダーの真也と恋人ユイの10年間を描いた映画「フタリノセカイ」。飯塚花笑監督が見たかった世界を描いたという。主演のひとり、坂東龍汰さんとは、“嘘のない演技”をめざして、議論を重ねた。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号の記事を紹介する。
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――2022年1月14日公開の映画「フタリノセカイ」で、トランスジェンダーの役を演じた坂東龍汰さん(24)。最初は演じることができるのか不安が大きかったという。撮影前に、やはりトランスジェンダーである飯塚花笑監督(31)と、何度もディスカッションを重ねた。
坂東:僕が演じた小堀真也は、体は女性として生まれたけど、自分は男性として認識しているトランスジェンダー。このお話をいただいたとき、正直びっくりしましたし、演じられるのかという不安も大きかったです。
飯塚:脚本を書いてるときは、真也を演じるのはトランスジェンダーか、トランスジェンダーをよく理解している人がいいと思ってたんですけど、会ったときに、坂東君は真也にぴったりだと思った。
坂東:トランスジェンダーでない僕が演じるうえで、そこに決して“嘘”があってはいけないと思って。それでディスカッションの時間をたくさん設けてもらいました。ある意味、小堀真也は監督自身でもあると思ったんで、分からないことは監督に聞くのが一番早い、と。
■芝居に“嘘”をなくす
飯塚:コロナ前だったし、しょっちゅう会ってたよね。実際にトランスジェンダーの方がやっているバーに一緒に行ったり。
坂東:僕、結構赤裸々に、自分のコンプレックスを監督に話しましたよ。
飯塚:結局、真也というのは、男として生きていくと決めているけれども、自分の体にコンプレックスを抱えている。それがブレーキになって、一歩、恋愛に踏み出せないんです。だから、坂東君の中にある個人的なコンプレックスが、人生における何かの障害を引き起こしているんだと感じて演じてもらえたら、お芝居として“嘘”はなくなるんじゃないかなと思ってた。