「複数の内定はあるけど、どこに就職をするか決め手がないまま、就活を続ける人が多いのが現状です」(奈良さん)
雇用に詳しい大分大学の阿部誠名誉教授はこう語る。
「高度成長期以来、若者が働き先を求めて地方から都市部に出ていき、政府も地方の自治体も地方に雇用の場を作ろうと努めてきました。その結果、企業立地が進み、雇用機会は増加しました。福祉・医療関係の雇用も増えました。しかし、キャリア選択の幅が狭いのは変わっていません。ITなど専門的な仕事は、地方では限りがあります。仕事の多様性に乏しく、それが地域間格差につながります」
大都市で雇用情勢が悪いと、地元志向になるという。
「1990年代以降、地元志向が言われていますが、これは都市でも非正規雇用が増え就職が難しい状況を受けて都市へのあこがれが小さくなったためと言えます。今の状況を放置すれば、地域間格差は拡大するばかり。地方でも望むキャリアを展開できるように多様な雇用の機会を増やしていくことが重要です」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年1月17日号