千葉興業銀行(千葉市)は21年、マイナビ・日経新聞の就職企業人気ランキング関東甲信越エリア版で、20年の63位から26位に大幅アップした。人事部の加藤陽介さんは、コロナ禍前は採用に苦戦していたと明かす。
「以前の就職合同説明会では、呼び込みをして数百人の学生にブースに来てもらうのがやっと。なかなか見てもらえず、エントリーは減少傾向でした」
ところが、コロナ禍で説明会やインターンシップをオンラインで開くと、難関大の学生が増えた。哲学や理工系といった今まで接点のなかった学部・学科の学生も集まるようになった。
「ちょっとのぞいてみようと、インターンシップには2倍以上の学生が参加しました。地元出身者と、隣接する東京や茨城の学生が主でした。結果として、幅広い人材を採用できました」
■地方で知名度を上げる
前出の就職企業人気ランキング東北版で2年連続1位の生活用品・家電メーカー、アイリスオーヤマ(仙台市)も、「地元回帰」の波に乗る。採用担当の佐藤祥平さんはこう語る。
「生活用品だけでなく、LEDライトや食品など幅広い事業をしており、18年から採用人数を増やし始めました。CMを打って知名度が上がり、応募者が格段に増えました」
東北で知名度を上げることが、優秀な人材の獲得の近道になる。
「関東・関西は人口が多いだけに優秀な学生がいますが、各社と競合になります。一方、東北出身の優秀な学生が地元に戻りたいと思ったら、人気ランキング上位の弊社にエントリーしてくれる可能性が高いのです」
ただ、新たな悩みも生じている。人材紹介業「DYM」の奈良智笑さん(24)が説明する。
「オンラインで企業と接点が増え、学生の内定取得率は上がっていると考えられますが、内定辞退も増えたとよく聞きます」
マイナビの調査(2279社)によると、「辞退の増加」と回答した企業は41.3%で、前年比15.9ポイント増だ。