――第2回の応募作品に期待されることはありますか。

伊藤:流行に乗ってほしくないなと。誰もやってないことをやろうという気持ちだけは持っていてほしいなと思います。

波津:この賞は雑誌への掲載を前提にしているので、掲載誌を意識して描くということもあってもいいかなと思います。あとは伊藤先生もおっしゃったように、あまりまとまらずに感性を出していただきたいですね。特に「Nemuki+」は感性が一番大事ですから。

伊藤:型破りな作品も読みたいですね。

■「挑戦のしがいがある映像化作品になる」後藤博幸さんと馮年さん

――映像作品を手掛けられていますので、特にお二人には「原作部門」についてお伺いしたいと思います。

馮:僕は映画や映像作品は制作しているものの、他の審査員の方のように「ホラー」をつくったことはないので、今回は観客の目線で選ぼうと思いました。面白い作品がとても多くて、背筋がゾクっとなったのもありましたし、鳥肌がぶわっと立ったのもありましたし、「怖っ」って声に出ちゃった作品もあって、とても楽しい時間を過ごせました。

後藤:「朝日ホラーコミック原作賞」の「ずっとずっと一緒にいて」の火葬場。やっぱり火葬場というだけで、なんだかざわざわします。そして決め手は、夜中にひとりで、この作品を読んだときにゾクゾクっとしたこと。唯一、背筋がゾクっとした作品でした。あと、どうしても1行1行を自分の中で映像に転換して読んでしまう癖があるんですが、「原作部門」の中から自分で映像化できる作品を選ぶとしたら、「赤い子」ですね。難しいからこそ、あえて制作してみたいです。

馮:「赤い子」のビジュアルをどう表現するかですよね。

後藤:そう、「これは難しいぞ!」っていう……CGを多用化しての合成などは、あまりやりたくないですし。すごく挑戦のしがいがある映像化作品になると思います。「羨望の人」(「HONKOWAホラー大賞」)も映像化してみたい作品ですね。いい意味で「起承転結が無い」というか、スキがあるというか。その破綻しているところに、実話らしさを感じます。創作では思いつかない設定や展開だと思いました。

――技術の進歩やプラットフォームの変遷で映像の世界はどんどん変化していますが、そういった中で人が求める「怖さ」も変わっていくんでしょうか。

後藤:個人的に、変わらない普遍的な怖さの感覚があると思っていて、それはCGやVFXを使ったモンスターの表現の中には無い気がしています。なんて言うんでしょうか……子どもの頃、お風呂場で頭を洗う時に後ろに何かいるのではと「背後が気になってしまうような怖さ」、その感じをどうやって表現するか。すなわちアナログで表現できるものでいかに勝負できるかっていうところに、ずっとこだわってきましたし、これからもこだわっていきたいですね。

馮:もともとの日本のホラーってじんわり怖いとか、雰囲気で怖がらせるものが多かったと思うんです。だけど最近は、ワンアイデアの切れ味の鋭い作品が多い気がします。加えて、今回の応募作の中で自分が良いなと思ったのは、人間の怖さや人間の狂気にゾクっとする作品ですね。ぱっと見のビジュアルの怖さと、その裏に眠っている人間の狂気性。この両方があるとすごくいいと思います。あとは、ホラーの中にコメディがちょっと入っている作品。「暗い案と」がまさにそうでしたが、そういう作品はすごく楽しみですし、もっとたくさん読みたいですね。

後藤:そうですね、この賞はぜひ続けていただきたいです!

取材・文/金山佐和(朝日新聞出版)

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