伊藤:自分の主観で描くと、どうしても読者に分かりにくいところが出ちゃうんですよね。

波津:確かに、自分ではなかなか分析できないことも多いですね。編集者に読んでもらうか、時間を置いて再度、読み直しをするしかないですね。

伊藤:「Nemuki+ホラー大賞」の「暗い案と」は、こういう絵柄でコメディタッチのホラーというアイデアが新しいですね。

波津:絵柄と「ホラー」のギャップが面白いですね。著者は実際に、仕事でこういうストレスを受けている方なのかも……。もっと漫画っぽい、ダイナミックな見せ方があってもいいかなとは思いました。

伊藤:「原作部門」はみなさん文章が達者で、「うまい表現するな」とか思いながら読みました。すごくおもしろかったです。

波津:でも逆に、あまりにも文章として完成され過ぎている原作はビジュアル化しづらいんですよね。文章と漫画では表現の仕方が違うので、コミカライズする人はそれなりに構成を考えなきゃいけない。描く人と編集者の力次第ですね。

伊藤:「ずっとずっと一緒にいて」はその点、ビジュアルが浮かびやすい作品でしたね。

波津:そうですね。火葬場というワンシチュエーションなので、描きやすいかもしれません。

――大賞の3作品に共通するポイントはありますか。

波津:全体的に今回は「見せ方」が分かっている作品を選びましたが、面白い感性や切り口があれば、多少絵が未熟だったり構成が物足りなかったとしても、将来性で選びたいです。

伊藤:既存の作品や流行と逆行するような、エッジのきいた作品が読みたいですね。

――そういった作品のアイデアは、先生はどういう風に生み出されるんでしょうか。

波津:伊藤先生は何百回も訊かれた質問じゃないですか?

伊藤:必ず訊かれます(笑)。でも結局は、日常の中でちょっと視点を変えてみたりとか。へそ曲がりな要素がないと面白いアイデアにはならないですね。

波津:私は、「アイデアってどこから来るのかなあ」って感じですけど……。なんとなくネタっぽいものをキャッチしようとしていると、ある日「あっ、これとこれを繋げたらこうなる」と思いつく。それの繰り返しですね。常に「とっかかり」を求めている気がします。今年は寅年だから虎の話、みたいな。

伊藤:「とっかかり」から広げていくのも、また難しいんですけどね。

波津:そこからは勘、ですね。

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第2回の応募作品に期待することは?