プロデューサー、川原卓巳。ノーベル賞受賞者が海外に籍を移し、J-POPの世界進出も後れをとる。日本は才能が開花しづらいのかと、ため息が聞こえてくる。しかし、諦めるのはまだ早い。世界が何を喜ぶかを知るプロデューサーの川原卓巳が「本気を出す」と決めたからだ。「こんまり」の世界進出を成功させた川原。才能ある人が自分らしく生きていけるプロデュースを、仕掛け続ける。
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「日本を面白くする。これから先の10年を使って、僕の人生を賭けて日本に尽くすと決めたんです」
ロサンゼルスから一時帰国中の川原卓巳(かわはらたくみ)(37)に会うと、彼は壮大なビジョンを語り始めた。
職業は「プロデューサー」。彼の名前を知る人はそれほど多くないかもしれない。しかし、彼が手がけた“代表作”の名は世界中に知れわたっている。日本でミリオンセラーとなり、翻訳版も含めて1300万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』の著者、片づけコンサルタントの近藤麻理恵(37)、通称「こんまり」だ。
2016年にはアメリカに拠点を移し、現地メディア露出や講演活動も積極的に展開。19年には動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」で公開した番組「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~」が年間最多視聴ドキュメンタリーに輝いた。さらにはエミー賞2部門ノミネートという快挙も。“今最もハリウッドスターが憧れる日本人”と言われる近藤の世界進出は、公私のパートナーである川原によって導かれた。
といっても、元ネタとなった本の企画には関わっていない。では何をしたのかというと、“こんまりのリブランディング”だ。
遡(さかのぼ)ること4年前。川原はロサンゼルスで初めて映像化の交渉の席に着いていた。
「KonMari」を映像化したいというオファーは、テレビ局やGAFAを含む大企業から複数きていた。川原は近藤の絶対に譲れないこだわりを真に理解できるパートナーを探していた。錚々(そうそう)たる演出家や制作関係者を前に、覚えたての英語で訴えた。「麻理恵は片づけを通じて世界をよくしたいと本気で考えている。番組ではそれだけを伝えたい。彼女の信念を曲げる演出はしないでほしい」