プロデューサーとして関わるミュージシャン、KIMIKAのリハーサルに駆けつけて応援。音楽プロデューサー、岡嶋かな多にオファーするなど、豪華スタッフを集めた。川原が作詞を手がけた新曲も近日リリース予定(撮影/山本倫子)
プロデューサーとして関わるミュージシャン、KIMIKAのリハーサルに駆けつけて応援。音楽プロデューサー、岡嶋かな多にオファーするなど、豪華スタッフを集めた。川原が作詞を手がけた新曲も近日リリース予定(撮影/山本倫子)

 それを聞き、「あなたが制作に関わって」と指名したのは、元パラマウント・ピクチャーズ社長で業界の重鎮、ゲイル・バーマンだった。川原はエグゼクティブプロデューサーとして抜擢された。ネットフリックスのオリジナル作品で日本人が制作の中枢に迎えられる例は稀(まれ)である。世界有数の投資会社セコイア・キャピタルが川原の会社に出資を決めたのもこの頃だ。

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 190の国と地域で配信された近藤の番組は、単なる片づけノウハウではなく、「禅」や「マインドフルネス」に通じる精神性を伝えるコンテンツとして評価された。「片づけを始める前に家に手を合わせる」「不用品を処分する前に感謝を口にする」といった行為を印象的に演出したことで、“無二の価値”として世界に届いたのだ。「下着を小さく畳めば、ほら、自立するんです」とバラエティー番組でお茶の間を楽しませた“日本のこんまり”とは違う届け方。どちらが正解でもない。しかし、より本質的なメッセージは、国境を越えて広がった。大量に作っては使い捨てる消費のあり方に異を唱えるSDGsや、内面の充実を重視する「ウェルビーイング」の潮流にもマッチした。

 これまでも「プロデューサー」と呼ばれる有名人はいたが、川原の目指すものは何が違うのか。

「多分、僕から何かを足すことはしないのが一番の違いだと思います。余計なものを引いて引いて、その人が本当に得意で独創的な力を発揮することに集中できる環境をつくる。『○○プロデューサーらしい』と見られる色はつけない。『あなたはそのままで素晴らしい』と言い続けたい」

 世界中からトップクリエーターが集まる制作現場で、川原が得た気づきが三つある。まず、どんなに活躍しているスゴい人も、自分と同じ人間だということ。次に、自分がその業界の素人であっても、ニッチでユニークなスキルがあれば信頼されるということ。そして、日本には世界に誇れるソフトパワーがあるということだ。

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