一つは豊後の戦国大名大友氏の『大友興廃記』で、そこに、「此度の敵魚麟の陣をとらば、味方は彎月の陣をはるべし。方円をとらば、此方よりは雁行をとるべし。鶴翼をとらば、長蛇をとるべし。鋒箭をとらば衡軛を取べし。軍法の義は、兼々ならしをかるゝといへども、今弥念を入、今日は軍の議定を成され、明日早天に御入数を出されん事御尤に存候」と記されている。
もう一つは播磨三木城の別所長治の軍記『別所長治記』で、別所氏の陣形と方角の関係について次のようにみえる。
味方南に陣取る時、敵北に陣を張る時は、北より南を水剋火と剋す。此の時、味方衡軛に陣を張る。衡軛は四方。西方は土也。土剋水と剋す。味方北に陣をはる時、敵南に陣取る。水剋火論ずるに及ばず。敵若し衡軛を張らば、味方方円・団形・魚鱗の陣を張るなり。団形は木、衡軛は土なれば木剋土と剋す(以下略)。
五行思想の五方、すなわち、東が木、南が火、中央が土、西が金、北が水で、五行相剋がベースになっていたとする。
■合戦の基本陣形「八陣」








◎監修・文/小和田哲男(おわだ・てつお)
1944年静岡県生まれ。静岡大学名誉教授。近著『戦国
武将の叡智 人事・教養・リーダーシップ』(中公新書)他、著書多数。また、NHK大河ドラマ「秀吉」「功名が辻」「天地人」「江~姫たちの戦国~」「軍師官兵衛」「おんな城主 直虎」「麒麟がくる」の時代考証も手掛けている。
※週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から抜粋

