1月15日、トンガで起こった海底火山の大噴火では、現地の被害の甚大さもさることながら、日本にも漁業関係者を中心に大きな被害をもたらした。当初、気象庁は「被害の心配なし」と発表したのに、なぜ、突然「津波警報」が出されたのか。気象庁を取材すると、現在の津波予測システムの限界が浮かび上がった。
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「通常の地震による津波であれば、メカニズムはわかっていますから、予測できます。ですが、今回起こったことはそれとはまったく違うものです。気象庁としては今後、同様なケースが起きた場合、どうすべきか、模索はしますけれど、それができるまでは、津波警報の仕組みを使って情報を発表せざるを得ないと思います」
気象庁地震津波監視課の西田貞明調査官はこう語る。
日本近海で地震が起こった場合、すぐさま震源の位置と地震の規模が求められ、津波の発生が予測される場合には、潮位変化の大きさが発表され、場合によっては、津波注意報や警報が出される。
ところが今回、国内ではトンガで起きた海底火山噴火による地震波はとらえられなかった。
■予測よりもずっと早く起きた変動
噴火が発生したのは日本時間で15日13時10分ごろ。気象庁に噴火の第1報が伝えられたのは15日13時45分で、現地では噴火にともなう津波も発生した。
日本への影響を考慮して、気象庁はすぐさま津波の予測にとりかかった。しかし、火山の場所は特定できたものの、震源の深さや地震の規模はわからなかった。そのため、トンガと日本の間にある各国の「験潮所」で観測された潮位変化の値を基に日本に到達する津波を予測した。すると、津波到達時刻は噴火発生から約10時間後の23時30分ごろ、潮位変化は20センチ未満という結果が導き出された。
そこで、気象庁は19時に「日本では津波の被害の心配なし」と、発表した。
ところが、そのわずか1時間後、20時ごろから、北海道から沖縄県にいたる太平洋沿岸で異常な潮位の変動が起こり始めた。予測されていた津波の到達よりも3時間半も早い。