時間ともに潮位の変動は大きくなり、23時55分、鹿児島県奄美市小湊で津波警報の基準を超える1.2メートルを観測した。
「ただ、津波とは違います。到達時刻がずっと早いし、津波であれば、震源に近いところから順次、来ます。ところが今回、日本沿岸ほぼ同時でした。どんなメカニズムで起きているのかまったく分からない潮位変化だったんです」
と、西田さんは振り返る。噴火による潮位変化と思われたが、メカニズムがわからない。だから、発表してもその後どうなるかがわからない。
「けれど防災上、危険な潮位変化なので、みなさんにお伝えする必要があると判断しました。それで、津波警報の仕組みを用いて、1メートルを超えたものは津波警報として発表したわけです」
16日0時15分、気象庁は奄美群島・トカラ列島に津波警報を発表。それ以外の太平洋沿岸には津波注意報を出した。
続いて、2時26分には岩手県・久慈港で高さ1.1メートルを観測。同56分、岩手県沿岸部に出されていた津波注意報が警報に切り替わった。
本来、津波警報は津波が到達する前に出されるものだが、今回は最大波が観測された後に警報が出される異例の結果となった。
■警報の根拠を答えようがない
対照的なのが、ハワイにある太平洋津波警報センター(PTWC)だ。火山噴火から一貫して「津波」の警戒情報を出し続け、太平洋の島々や沿岸に注意喚起を行った。
なぜ、気象庁とPTWCでは対応に大きな違いが出たのか。
「事前に注意報を出せなかったのは、注意報を出す根拠が何もなかったからです。津波注意報を出せば自治体が動くし、漁業関係者もいろいろな対応をします。でも、そのとき、『津波注意報を出した根拠は何ですか?』と問われたら、答えようがありません」
西田さんによれば、きちんとした数値モデルに基づいた計算結果なしには、注意報や警報を出すことはできないという。その数値モデルをつくろうにも、データを集められるような事例がないという。