ペットはもはや大事な家族。読者とペットの愛おしい日常のひとコマをお届けします。今回の主役は、犬のヒメちゃんです。
【写真】こんな姿見たことない! 枯れ葉をやさしく抱えて立ち上がる猫
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「ヒメ(写真、雌、12歳)」。私の60年の人生で一番多く呼んだ名前。いつか私が認知症になってもこの名前だけは忘れないだろう。
父を12年前に亡くし、一人になった母の相棒にと、私は自分が大好きな柴犬を選んだ。最初はちょっと距離を置いていた母だったが、次第に可愛がるようになった。そんな母も父の死から5年後に他界した。
それからは、来る日も来る日も12時間以上の長いお留守番が7年間。諸説あるらしいが、犬の1日は人間の7日間に匹敵すると言う人もいる。その計算でいくと、49年間分も待っていてくれたんだね。
2人きりの暮らしになった最初の頃は、いつもちぎれんばかりに尻尾を振って玄関まで迎えにきてくれたのに、今は迎えにはこず、部屋で玩具を転がして知らんぷり……。
だけど、わかってるんだよ。私が家を出た後は30分も遠ぼえをして、その後は玄関で一日ずっと待っているって。そして夜、車が止まった音を聞くと、居間に走っていって、素知らぬ顔でおもちゃを振り回すことも。
そういうイジケン坊にしてしまってごめんね。そんな姿も涙が出るほど愛おしい。
もう少ししたら退職するからね。そうしたら今まで寂しい思いをさせた時間が取り戻せるよう、ずっと一緒にいるよ。だから長生きしてね。
ヒメがつないでくれたご近所づきあいも、改めて大切にしようね。大好きな母の友人のおばちゃんたちにも、もっと会いにいって可愛がってもらおうね。
これからもたくさん、たくさん「ヒメ」と名前を呼ぶからね。そうしたら尻尾を振って飛んできてね。(東京都東村山市/60歳/医療職)
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※週刊朝日 2022年1月28日号