そして、11日の発射を受けて米政府が制裁強化の動きを見せると、北朝鮮外務省は14日朝、「米国が対決姿勢を取るなら、我々は更に強力ではっきりと反応せざるを得ない」とした報道官談話を発表した。北朝鮮は14日と17日にも短距離弾道ミサイルを発射した。

■失政が続く治世10年

 北朝鮮と金正恩氏が、自分に自信が持てなくなるのも無理はない。11年末に権力を継承してから10年、正恩氏の治世は失政ばかりだった。大規模なスキー場、100棟以上の大ホテル群が連なる観光地区、平壌の総合病院建設などはいずれも頓挫した。国際社会による制裁に加え、新型コロナウイルスの影響もあり、対外貿易額も激減した。韓国統一省によれば、14年に76.1億ドル(約8700億円)だった対外貿易額は、20年に8.6億ドル(約980億円)にまで落ち込んだ。20年の経済成長率はマイナス4.5%だという。

 同省などによれば、北朝鮮の主要会議は12年から19年までは年間3~8回だった。ところが、20年には18回、21年には14回と急増した。正恩氏が出席する場合、それまでの「会議を指導した」という表現は姿を消し、「参加した」「司会した」という説明に置き換わった。おそらく、政策が失敗した場合の追及を恐れ、責任を部下たちに分散しているのだろう。正恩氏は21年1月に続き、今年1月も「新年のあいさつ」を見送った。(朝日新聞記者・牧野愛博)

AERA 2022年1月31日号より抜粋