ウラジオストクに到着し、歓迎式典に出席する北朝鮮の金正恩氏/2019年4月24日
ウラジオストクに到着し、歓迎式典に出席する北朝鮮の金正恩氏/2019年4月24日

 北朝鮮が次々とミサイルを発射し、核実験などの再開をほのめかした。金正恩氏の意図はどこにあるのか。AERA 2022年1月31日号の記事を紹介する。

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 2022年の北朝鮮。新年早々、4回、計6発の弾道ミサイルをぶっ放した。19日には、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記らが参加した党中央委員会政治局会議を開き、対米問題について討議し、米朝関係の信頼構築のために、暫定的に中止した全ての活動を再開する問題を迅速に検討することを決めた。

 北朝鮮は18年4月の党中央委員会総会で、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)試射の中止や、核実験場の廃棄を決めていた。今後、こうした軍事挑発を交え、北朝鮮を取り巻く難局を打開していく戦略なのだろう。

 ただ、その行動は「フラジャイル・ナルシシズム」にも見える。心理学でいうところの「自分に自信が持てないので、相手の主張をすぐ否定する」行動心理のことだ。

■「後頭部写真の理由」

 典型が1月12日付の労働新聞1面が伝えた7枚の写真だった。北朝鮮が11日に行った極超音速ミサイルの試射を伝える報道だ。金正恩氏を捉えた写真は計4枚。うち、ミサイル開発メンバーらとの記念写真以外の3枚は、いずれも正恩氏の後頭部ばかりが目立つ写真だった。さらにその中の2枚には大きなガラス製の灰皿も写り込んでいた。

 最高指導者の写真や映像は、党宣伝扇動部や国家保衛省などによって入念にチェックされる。場所が特定されるような安全上の懸念がないか、指導者の威厳を損ねていないかといった点だ。正恩氏の表情がわからないような写真を公開するのは、異例のことだ。

 おそらく、昨年末の党中央委総会で、正恩氏の後頭部に白い痕跡がみられ、一部メディアから「ばんそうこうの痕ではないか」といった健康不安を指摘する報道が出たことへの反論だろう。灰皿も「たばこを吸えるくらい元気だ」という意味だ。

 正恩氏は心疾患の家系にあり、痛風や糖尿病などの持病を抱えているという。韓国の情報機関、国家情報院は昨年、正恩氏がダイエットを敢行し、140キロだった体重を20キロ以上減量したと韓国国会に報告している。健康に気を使っていることは明らかで、北朝鮮当局は、健康不安から正恩氏の指導力に影響が出ることを強く警戒しているのだろう。

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