また、地上波のテレビでは限定的なコンテンツしか放送されていなかったが、ユーチューブなどの出現で、幅広いコンテンツがいつでもどこでも視聴することが可能になった。現在のコロナ禍における、ネットフリックスなど動画ストリーミング・サービスへの需要急増は、この傾向に拍車をかけているだろう。
2つ目は、SNSによるファンとのつながりである。特にK-POPアーティストたちは、ツイッターやインスタグラム、TikTokなどのSNSを通して、ファンとの関係性を築き上げることに非常に成功しているとアンダーソン氏は指摘する。
前出のダニエルさんも、韓国のアイドルがSNSで垣間見せる私生活の姿や舞台裏に触れ、「非常に親近感を覚える」と語った。
さらに、SNSはアイドルとの距離感だけではなく、他の国にいるファンたちとの距離感も縮めている。ダニエルさんはツイッターやインスタ以外にも、ファン交流アプリ「Weverse(ウィバース)」などを使って、世界中の韓流ファンと毎日交流を行うことが楽しみだという。
そういった世界中のファンたちは、自主的に韓国語のコンテンツを自分たちの国の言語に訳し、さらなる普及の拡大に役立っているとアンダーソン氏はいう。
3つ目は、韓国政府による長年に渡る文化輸出戦略である。1990年代後半に起きたアジア通貨危機で落ち込んだ経済を立て直すために、当時の金大中(キム・デジュン)大統領は、韓国における文化産業を21世紀の国家基幹産業と位置付け、メディアやエンタメ業界などを積極的に支援してきた。
政府機関のコンテンツ振興院によると、2021年における韓国から海外へのドラマや音楽、ゲームなどのコンテンツ輸出額は、115億ドル(約1兆3200億円)に達する見込みで、前年と比べると6.8%の増加、5年前と比べると約2倍の額になる見通しだ。
アンダーソン氏によると、韓国政府の戦略は、文化などの「ソフトパワー」の海外輸出を通して、国際社会に政治的影響力を広げるという意図がある一方、自国の市場だけでは経済成長に限界があり、海外の市場が必要であるという韓国特有の理由もあるとのことである。