『声もなく』(全国で順次公開中) (c)2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEWIS PICTURES & BROEDMACHINE & BROCCOLI PICTURES. All Rights Reserved.
『声もなく』(全国で順次公開中) (c)2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEWIS PICTURES & BROEDMACHINE & BROCCOLI PICTURES. All Rights Reserved.

「宮崎駿作品を子どもの時から見て育った。家族を素材にしながらぞっとするような話をシンボリックに展開している。『千と千尋の神隠し』なんて、両親が豚に変身してしまう。そんな一見ぞっとするものも嫌悪感なく、ファンタジックに描いているのに感銘を受けたの」

 この映画で、加害者とされた青年は少女と平穏に過ごせると夢見ていた。しかし、ラストで少女のたくらみが明らかになる。「家族」を思い始めた青年に対し、少女はあくまで「偽の家族」を演じていた。

 死体処理を生業とする青年だけに、随所で血の匂いがする作品だった。

 リンチによる血、死体の運搬で地面に点々と残された血。そこにしゃがみ込んで無邪気に模様を描く少女。それらの配置は、11歳で間もなく初潮を迎える少女のこれからの人生を暗示していた。

 最後まで目の離せないヒリヒリした『声もなく』は青龍映画賞新人監督賞、百想芸術大賞監督賞を受賞した。「多くの人がコロナ禍で映画を作ったことに対し応援のメッセージをくれたと受け止めています」

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2022年2月4日号

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