さらに彼らは、やたらと「本業に専念しろ」という頑固親父のような思想をぶつけてきます。想像するに、テレビの世界は限りなく純度が高く、無欲で謙虚であるべきと信じて疑っていないのでしょう。私も、幾度となく「おとなしく2丁目だけで歌っていろ!」「早く本業の水商売に戻れ!」と言われたものです。

 そのような人たちからすれば、新進気鋭のユーチューバーがテレビ進出するなど、断固として認めるわけにはいかないはず。しかしながら、テレビは得てして「本業ではない人たち」が集まっているところであり、医者も弁護士も小説家も野球選手もホステスも、皆一様に「タレント化」させて見世物にするための装置なのです。

 テレビ愛に溢れ、どこまでもテレビに対して「住民意識」を抱いているネット民の皆さん。残念ながら、「お前の出る幕じゃない」と言いたくなるような人たちが出てこそ、テレビという土俵は盛り上がる。それをどうかお忘れなく。

 そしてヒカルさんにおかれては、かなりの期待値と即効性を求められると思いますが、やると決めたからには、テレビを食ってやるぐらいの勢いで行かれてください。ただし、テレビ画面に映る自分を、自分の思い通りにコントロールできるなんて絶対に思わない方がよろしいかと。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2022年2月4日号

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