ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ユーチューバーのテレビ進出」について。
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最近になってようやくユーチューバーたちの顔や名前を認知できるようになりました。40代も後半に差し掛かると、「ヒカキンとヒカルは同一人物ではない」ことに気付くまでかなりの時間を要します。その昔、祖母がプロ野球ニュースを観ながら「この人、歌も歌っている人ね?」と、中井美穂と中山美穂を混同していましたが、私もそう遠くない未来に、その境地に辿り着きそうです。
それはさておき、トップユーチューバーのヒカルさんが「今年はテレビに進出する」と宣言したそうで、ネットニュースになっていました。今やユーチューバーがテレビ出演するのも珍しくありませんが、若干「そろそろテレビに出てやってもいい」的な文脈で読み取られてしまったようで、ネットニュース媒体ならびにヤフコメ民(ヤフーニュースにコメントする人たち)は、「待ってました!」とばかりに否定的な論調を繰り広げている様子。
興味深いなと感じたのが、日頃散々「つまらない」だの「忖度」だのとテレビに悪態ばかりついている人たちが、いざ外様の新参者がテレビ進出をほのめかした途端に、「テレビはそんなに甘くない」とか「土俵が違う」とか「ユーチューバーは発声や滑舌ができていないから無理」とか、必死の形相で拒絶反応を示しているところです。やはり彼らはテレビが大好きで仕方がないのだと痛感した次第です。でなければ、日がな一日テレビを観ながらコメントを打ち込み、観ていない番組のニュース記事にも私見を残したりしません。
そうは言っても、彼らのテレビ愛というのは極めて保守的であり、テレビに出る人間に対する許容範囲が狭いのも特徴です。「二世」を認めない。「第7世代」を認めない。「セレブ」を目の敵にし、「オネエ」や「ハーフ」などにも非情なまでに辛辣だったりします。