イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より

A 精神疾患の回復に必要なサポートは病気の種類や時期によってさまざまですが、どの病気にも共通する大事なポイントは、精神科の主治医とつながりが切れないようにすること。子どもが薬を飲むのを嫌がったりすることがあっても、「それでもいいから病院には行こうね」と声をかけてください。

 主治医は親御さんにとっても大切なアドバイザーでありサポーターですから、主治医とつながっていることが安心感になるのではないでしょうか。

Q 心の病気は自殺につながりやすいと言われます。自殺を防ぐために、親はどうすればいいでしょうか?

A 「あなたはかけがえのない子だ」「価値ある存在だ」というメッセージを伝え続けてください。「生きているだけでいいんだ」と。ただ、本来、こうしたメッセージは、自殺を前にした切羽詰まった時にだけ発信するものではありませんよね。

 幼い頃から自分を肯定するさまざまなメッセージをいろいろな場面で適切に発し続けて育てられてきた子は、自己肯定感が強い。学校でいじめられたとしても「周りはアホばっかり。自分の価値がわからんのか!」と、跳ね返すことができる子も少なくありません。そんな長い年月をかけて得られる自己肯定感を、子どもが病気になって憂鬱(ゆううつ)で消えてなくなりたいと思っているときにいきなり持たせようとしても無理があります。そんなときには、理屈なく、あなたは価値ある存在なんだとメッセージを送っていただきたいと思います。

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※『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より抜粋

東京都立松沢病院院長の水野雅文医師
東京都立松沢病院院長の水野雅文医師

水野雅文(みずのまさふみ)
東京都立松沢病院院長 1961年東京都生まれ。精神科医、博士(医学)。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。イタリア政府国費留学生としてイタリア国立パドヴァ大学留学、同大学心理学科客員教授、慶應義塾大学医学部精神神経科専任講師、助教授を経て、2006年から21年3月まで、東邦大学医学部精神神経医学講座主任教授。21年4月から現職。著書に『心の病、初めが肝心』(朝日新聞出版)、『ササッとわかる「統合失調症」(講談社)ほか。

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