「自宅で病気と付き合いながら暮らしている間に、病気と闘うことが必要になる可能性は常にあります。病気と闘うという目的においては、在宅医療より病院での治療のほうが適切という場合もある。在宅医は、そうした状況を適切に見極め、病院受診のコーディネートをするのも大切な役割の一つです」
在宅医療で使用する医療用機器などは、持ち運びができるものに限られるため、どうしても病院でしか受けられない内容も出てくる。例えば、CTやX線などの検査や、手術をはじめとした治療などだ。こうした病院の受診が必要なときは、在宅医からの紹介状を持って受診することができる。
◆できることは自分でやること
また同じ病気であっても、時期によって対処法が異なる場合もある。例えば脳梗塞の場合には、発症してからすぐは、病院でしかできない治療やリハビリを受ける必要がある。だが、ある一定の期間が過ぎて状態が落ち着くと、病名は脳梗塞のままだが、自宅で病気と付き合っていける。同じ病気であっても、時期に応じて病院か自宅か、適した場所が異なる。
冒頭の例のような、がんの緩和ケアは、基本的に病院と同じケアができる。在宅医療でも、痛み止めに使用するモルヒネなどの医療用麻薬は病院と同じように使うことができ、万が一、薬が飲めなくなってきた場合にも、病院と同じように注射に切り替えて自宅で緩和ケアを継続することが可能だという。前出の中村医師は言う。
「がんの緩和ケアという点では、在宅も病院とほぼ同じレベルでのケアができます。ただ在宅医の中では、緩和ケアの経験があまりなかったり、医療用麻薬そのものを処方しないと言われてしまうケースもあります。がん終末期患者の在宅医を探す場合には、在宅緩和ケアの実績がどれぐらいあるか、どれぐらいケア内容が充実しているかを見ることも、医師を選ぶ尺度になります」
同居している家族がいる場合、家族がサポートできることはどんなことだろうか。往々にして、在宅療養を選択した時点では、家族は「頑張って自分たちでサポートしよう」と気負いがちだという。だが実際には老老介護や働きながらの介護であるケースも多く、「完璧にサポートしよう」と思うとどうしても負担が重なり、疲れてしまう。中村医師は言う。