●理想のDEEN像に苦しんだ過去
――ミリオンヒットの後も「瞳そらさないで」「未来のために」などのヒット曲が続きます。人気を保つ上で不安や葛藤などはありましたか?
正直、不安はずっとありました。「いつ売れなくなるんだろう」とか、「来年はコンサートに人がこないんじゃないか」とか、マイナスなことをずっと考えていた時期もあります。自分たちの実力よりも、DEENが大きくなりすぎているのも感じていました。それに僕らはメディアにまったく出ていなかったので、ファンが思うDEEN像を壊しちゃいけないとか、かなり悩みました。「DEENのボーカルってスタンドマイクなのかな」とか、もうそういうレベルです。余計なことを考えてばかりで無理もしていた時期もありました。でも、同じレコード会社だったB’zやZARDなど、人気が突き抜けていた存在が近くにいてくれたので、それはすごいモチベーションになりました。「あんな存在になりたい」って、もうそれがエネルギーでした。
――音楽業界で人気を継続していくのは難しいという印象です。
この世界、人気がずっと上昇していくこと、保つことも非常に難しい。あのCDが爆発的に売れる時代に、たまたま僕たちはうまくのっかることができた。売れることって奇跡ですから。時代背景、DoCoMoのタイアップのタイミング、プロデューサーとアーティストの関係性とか、すべての要素がうまく絡み合って偶然に生まれたもの。あの瞬間だからこそ生まれた奇跡だと思います。純粋に29年間も続けてこれたことを誇りに思います。それにDEENが活動を続けられているのは、それこそ90年代から応援してくれているファンのおかげ。ファンはもうアーティストの財産です。それだけでもう十分。これからもファンのために、そして自分たちのためにできるだけ長く歌を歌っていきたい。それができればもう最高です。
池森秀一(いけもり・しゅういち)/1969年12月20日生まれ。1993年にDEENのボーカルとしてシングル「このまま君だけを奪い去りたい」でデビュー。「瞳そらさないで」「未来のために」「ひとりじゃない」など数々のヒット曲で知られ、2021年12月には通算35枚目となるアルバム「シュプール」を発売。2023年にはデビュー30周年を迎える。「マツコの知らない世界」に「年間約360日蕎麦を食べ続ける男」として出演したことで話題となり、2020年には蕎麦に特化したYouTubeチャンネル「信州戸隠 池森そば 赤坂店」を開設、蕎麦料理研究家としても活動の幅を広げ続けている。
(聞き手・構成/AERA dot.編集部・岡本直也)