故ダイアナ妃の銅像の除幕式に参加したウィリアム王子(左)とヘンリー王子/2021年7月1日(写真:gettyimages)
故ダイアナ妃の銅像の除幕式に参加したウィリアム王子(左)とヘンリー王子/2021年7月1日(写真:gettyimages)

■テディベアに埋もれる

 厳しい決定の背景には、今年は女王即位70周年という英王室初の慶事が関係しているようだ。

 6月には4連休を設け、コロナ禍が収まれば、各国の王族らを招いて祝賀行事を開催する予定だ。そこに“小児性愛者の息子”が顔を出すことなど、あってはならない。たとえ王子自身が終始一貫無罪を主張し、正式な裁判が始まる前だとしても、王室は彼の追放を断行した。

 王室内では、チャールズ皇太子(73)、アン王女(女王の長女、71)、エドワード王子(三男、57)、ウィリアム王子(39)らが話し合いを重ねた。「女王を守りたい」との声が圧倒的で、アンドルー王子をかばう意見は最後まで聞かれなかった。王子のプライバシーも次々と明かされている。

 英国の民放ITVが1月18日に放送したドキュメンタリー「ギレーヌ、アンドルー王子、そして小児性愛者」の中で、元警備員が王子のテディベア・コレクションについて詳細に語った。

 それによると、王子は60個ほどものクマのぬいぐるみをベッドの周囲に並べて一緒に寝た。寝室の掃除係に写真を渡し、掃除後はすべてを元の位置に正しく戻すように厳命、少しでも間違うと猛烈な癇癪(かんしゃく)を起こしたと打ち明けた。また王子の部屋のカーテンを閉めた際に隙間があると、王子から叱り飛ばされたとのメイドの証言もあった。

 今秋から始まる予定の裁判に王子は民間人として向き合う。

「リトル・ブラック・ブック」と呼ばれる住所録がある。マクスウェル被告が持っていた100ページ足らずの本だ。約2千人にも及ぶ有名人の連絡先が書き並べてあり、ドナルド・トランプ前米大統領らも載る。そのうち301人がイギリス関連で、アンドルー王子のほかにミック・ジャガー、トニー・ブレア元首相らの名前もあった。

 これらの人物がすべて悪事に関わったわけではないと断りながらも、FBIなどが綿密に調査するそうだ。エプスタイン元被告のネットワークは想像以上の規模で広がる可能性がある。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2022年2月14日号より抜粋

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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