相撲は己に勝たなきゃいけないことが多いから、投げやりな気持ちだと勝てないもんなんだ。執念を持って、やっと勝てるようになる。執念は怨念と言ってもいいくらいだ。大鵬さんも相撲の勝ち負けに対してはシビアで、絶対に勝ってやろうという気持ちが強かったし、白鵬もあまり口には出さないけど、勝負に対する執念は確かにあったよ。投げの打ち合いになると、絶対に手から落ちない。これはモンゴル人力士全員に言える、モンゴル人の執念だと思う。
相撲は立場が上がると自分の言い分も通るようになる。下っ端のときは幕内の力士にはこき使われて、深夜の2~3時にうどん屋まで出前をさせられたけど、幕内になったら今度は自分が同じことをさせたりね。それが普通なのが相撲の世界だ。毎日の取り組みで勝ち負けがはっきりついて、白星、黒星を重ねて、自分を上げたり、反省したりを繰り返して成長するんだ。特に若い人に言いたいのは、うぬぼれるときは思い切りうぬぼれて、叩かれるときは徹底的に叩かれてもいいということ。叩かれたときにへこたれないで立ち上がれる奴が成功する。そこでへこたれるのはそこまでの奴だ。叩かれても立ち上がれば、結果的に地に足がついて、自分でもやり遂げたという満足感が得られるってもんだ。
プロレスは相撲上がりの人も多くいたけど、そういう世界に揉まれてきた反動なのか、優しい性格の人が多かった印象だ。俺も相撲上がりだから、特にそうしてくれたのかもね。特に大熊元司さん、ロッキー羽田とかね。面白いのは、プロレスに転向しても、相撲上がりの中では、相撲時代の地位がモノを言うんだ。プロレスで活躍してても、相撲で幕内だったか、序二段かで全然発言力が違う(笑)。
プロレスでもヒールのレスラーは、本当は性格がいい奴が多いって? そんなことないよ。リングの上でやっているのとのギャップがあるからそう見えるだけで、実際はみんなヒドイもんだよ(笑)。そういえば、俺がプロレスデビューしたての頃、デストロイヤーと戦ったとき、返し技をパッパッとできないでいると「He do not nothing!(コイツはなにもできない!)」って言いやがった! すごいだろう! 俺は中卒なのにデストロイヤーの英語がわかったんだから(笑)。あのときは「この野郎、いらんこと言いやがって!」と思ったもんだよ。キャリアがつくといらんことも言うようになって、若い奴にとってはうるさいだけだよ、ホント。