もちろん、そこには誇張があるが、どんな民族も現場労働者としては日本人にかなわないというのだ。現に、その企業の米国人幹部も可能な限り多くの日本人を雇いたいと言う。「安い給料でも(と言っても日本よりは高いが)全く文句を言わず、仕事は完璧にこなす。頼んでもいないのに改善提案までしてくれる。そんな労働者ならいくらでも雇いたいのは当然」というわけだ。
100年前と違い、日本人は容易に海外の情報を入手することができる。先進国の中で、日本だけが賃金が上がらず、相対的に貧しくなっていることも国民に知れ渡るようになった。
日本では、長時間労働で休みは取れず低賃金、サービス残業、セクハラ、パワハラも日常茶飯事だ。そんな日本の労働者にとっては、欧米で働けば、少しはましな労働条件で人間らしい生活ができるという望みがあるように見える。海外で単純労働者として働き、日本に仕送りしてもらえれば、日本経済にもプラスだ。
令和の移民奨励策。100年前とは全く異なるが、国民を食べさせるためには、そんな禁じ手が議論される日が近いのかもしれない。
※週刊朝日 2022年2月25日号より