なぜ、虐待の連鎖は起きるのか。親から虐待された子どもの里親などをしている青少年養育支援センター「陽氣会」(名古屋市)代表の杉江健二さんは言う。
「子どもは人とのかかわり方は基本的に親から学びます。言葉で接する親に育てられた子どもは、それが人とのコミュニケーションのベースとなるので、大人になっても言語中心のコミュニケーションをとり、暴力を振るったりするようになることはあまりありません」
一方、暴力でコントロールされてきた子どもは、叩かれることは当然「嫌だ」と思い、大人になった時はそんな親になりたくないと思う。だが、子育てで自分の思い通りにいかなくなったりすると、他のコミュニケーションの取り方を知らないため、自分がやられたのと同じやり方が出る傾向が強いと語る。
「また、乳幼児期に親とのコミュニケーションが取れないなどの不適切な養育が行われると、子どもの脳が物理的に傷つき我慢できない、切れやすい、いじめに遭いやすい、いじめをしやすいといった問題行動を起こしやすいと言われています」(杉江さん)
梯被告は、本心では交際相手がいた鹿児島に行きたくなかったが、断ることができなかった。自己肯定感が低かったとも見られている。自己肯定感について、杉江さんはこう話す。
「虐待を受けた子は親から否定されてきたため、自己肯定感が低くなっています」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年2月21日号より抜粋