北京五輪のフィギュアスケート女子シングルで、カミラ・ワリエワ(ROC=ロシア・オリンピック委員会)の演技に世界中の視線が注がれた。禁止物質の陽性反応が出ており、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が競技への出場は認めたものの、身の潔白が証明されたわけではなかった。結果は、ミスを連発して4位。演技が終わるとリンクで泣き崩れた。この問題をどのように考えるべきなのか。ドーピング問題に詳しい専門家に意見を聞いた。
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ドーピング問題で揺れるワリエワは15日、女子シングルのショートプログラム(SP)に出場し、1位で通過。17日のフリーの演技に世界中の注目が集ったが、ジャンプでは着氷でバランスを崩して手を突いたり、転倒して尻餅をついたりした。ステップでも足元が乱れ、動揺がそのまま演技に出たような痛々しい姿。見ているこちら側の胸が締め付けられるようだった。
結果は4位。一部では「周りの大人の責任」「彼女は被害者」「こんなかたちで傷つけるなんて」と15歳の少女に同情票が集まっている。その一方で、表彰台を逃したからといって、ドーピング問題が帳消しになったわけではないという声もある。
「いろんな選手にメチャクチャ影響が出ているというのは間違いない。報じられていることが真実ならば、ワリエワさんは出場すべきではなかったと思いますよ」
ドーピング問題に詳しい、名桜大学人間健康学部スポーツ健康学科の大峰光博准教授によると、ドーピング違反を指摘されたアスリートは「知らないで飲んだ」「自分の意思ではない」という弁明が多いという。
「これまで、『うっかり飲んだ』でドーピング違反となり、出場停止になった選手はたくさんいるんですよ」
ことの発端は、ワリエワが出場した昨年12月25ー26日のロシア選手権までさかのぼる。この大会で、ロシア反ドーピング委員会(RUSADA)が検体を採取。2月8日になって、ストックホルムの検体分析機関が検体から、禁止物質「トリメタジジン」に陽性反応を示したと報告して騒動となった。
検出された「トリメタジジン」は狭心症の薬で、血流を促進する作用があるという。
「アスリートが使えば、持久力を向上させる効果があるでしょうね。持久力向上の禁止物質で有名なのは他にも『エリスロポエチン』というのがあり、通称エポと呼ばれ、海外の自転車競技の選手がそれをよく使っていました」