この夏、「週刊少年ジャンプ」で連載中の漫画「ONE PIECE」が25周年を迎えた。多くのファンの胸に深く刻み込まれてきた冒険物語。最新映画もまた重厚な作品だ。クラゲ海賊団の船長・エボシを演じた俳優の山田裕貴さんに、「ONE PIECE」の魅力を聞いた。AERA 2022年8月8日号の記事から。
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まっすぐな瞳から、涙がこぼれ落ちた。
アニメ「ONE PIECE」の最新映画「ONE PIECE FILM RED」のワールドプレミアが、7月22日に日本武道館で開かれた。連載25周年を迎えた尾田栄一郎さんの大ヒットコミック『ONE PIECE』が原作で、素性を隠した歌姫・ウタを中心に物語は展開する。キャストや監督ら16人が集結した大舞台で感極まったのは、ゲストとしてクラゲ海賊団の船長・エボシを演じた俳優の山田裕貴さんだ。イベントの感想を尋ねると、
「もう、言葉がないです」
とぽつり。山田さんにとって、ワンピースは「人生の教科書」のようなものだという。
「ずっと一緒に歩んできたなぁって。ルフィが修業を始めたときに僕も東京に出たなとか、いろんなことを思い出します」
■ルフィのような男に
ワンピースの連載が始まったのは、山田さんが7歳の頃。月曜日には「週刊少年ジャンプ」を読み、コミックスが出れば書店に駆け込んだ。すべてを受け入れる「ルフィのような男になりたい」と願うし、「ルフィが死を覚悟したときのように後悔のない笑顔で燃え尽きたい」。作品が好きすぎるあまり、役者を目指す前から「いつかワンピースの映画に出たい」との思いを抱いていた。
小中学時代は野球に明け暮れ、その後、俳優を志して名古屋から上京。今や朝ドラに大河にと話題作に引っ張りだこの売れっ子の一人になった。
だが、その俳優人生は順風満帆ではなく、20代中盤までは「卑屈」で「めちゃくちゃ性格が悪かった」と振り返る。
「人当たりはそんなに悪くないと思うんですけど、仕事を始めたときは活躍している同世代の役者を見て、『なんであいつが出られて、俺はダメなんだ』って感情で頭と心が埋め尽くされていたんです」
嫉妬のあまり、ドラマや映画から離れ、友達に愚痴る日々。あるとき、友達から「人のこと悪く言ってばっかりで、今のおまえ大嫌い」と言われ、目が覚めた。
「うまくいかないのは、誰のせいでもなく自分のせいだって気づいて。外と比べるんじゃなくて、自分のことだけ見つめようと考えるようになったら、いろんなことを受け止められるようになりました。ルフィも他人を否定しないんですよね」