今、マンション業界では、管理人の深刻な人手不足が問題視されている。ひと昔前まで“定年でリタイアした後の再就職先”として人気を集めていた管理人の仕事だが、ここ数年は求人を募集しても応募者がなかなか集まらないという。マンション管理コンサルタントの土屋輝之さん(さくら事務所)は言う。
「企業の定年延長や再雇用制度の動きが活発化し、定年後も働ける仕事が増えたことから、シニアの応募者が激減しています。こうしたことから、管理人のなり手不足が大きな問題として迫ってきています」
マンション管理業協会のマンション管理トレンド調査(2020年)によれば、従業員の過不足状況について全体の68%の会社が「大いに不足」「やや不足」と答えた。長期にわたって欠員を補充できないことが問題になっている。
「人手不足によって、人件費も高騰傾向にありますが、値上げが管理組合に受け入れられない場合には、業務の変更をすることになる。管理人の勤務時間を短くしたり、清掃の頻度を下げるなど、管理費の値上げを避けるための手段を検討せざるを得ない状況が起こっています」(土屋さん)
なぜ管理人のなり手不足が加速しているのか。管理人の仕事は、掃除やゴミ出し、居住者とのコミュニケーションなど多岐にわたる。集合住宅となるとゴミ出し一つとっても大変だ。ゴミ収集の朝は、収集時間に間に合うように出勤し、ゴミ置き場のゴミを収集車が来る場所へと運ぶ。分別されていないゴミがあれば、管理人が分別することになる。ゴミを出した後に、ゴミ置き場の清掃をするのも管理人の仕事だ。
「管理人の仕事はいわば、“きつい、汚い、危険”の3Kのイメージがついて回る。これに加えて、住人の生活を預かるという大きな責任も伴う」(土屋さん)
さらに、大型マンションでない限りは、基本的に各マンションにつき管理人は一人。「とっさの判断を迫られるシーンも多く、それを重圧に感じてしまう人もいます」(大和ライフネクスト・久保依子さん)