1975年 浩宮さま、学習院高等科入学式に出席
1975年 浩宮さま、学習院高等科入学式に出席

 中等科時代の浩宮親王の家庭教師をつとめた数学科の佐藤茂人教諭から聞いた話として、こんなエピソードに触れている。

〈浩宮は、自信がないと練習問題の解答をなかなか示そうとしなかったとか。数学の誤答を提出することを、嘘をつくことと同義に考えていたという。中等科時代の彼には、「誤答」→「嘘をつくこと」=「いけないこと」という、常識では考えられない思考の枠がはめられていたといえよう>(『浩宮の感情教育』より)

 小坂部氏は、ご両親の明仁皇太子、そして美智子さまと面談をした際に、担当する現代国語の読解や鑑賞はよく出来ているが作文は、「喜怒哀楽の感情表現が乏しい」、と説明し、こう分析している。<日常生活における喜怒哀楽という「私情」を漏らすことを抑制する心理が働いていたのだろうか>(同)として、将来の天皇として重責を背負い、「正しくあらねば」と自らの感情にふたをして自身を律する浩宮親王に、複雑な感情を寄せた。

 苦悩と葛藤を抱えながら少年浩宮は成長し、平成の時代に皇太子となった。会見などでは、「新しい皇室と公務のあり方を模索している」と国民にメッセージを発信し続けた。

 前出の多賀さんは、こう話す。

「令和の天皇陛下は皇太子だった若いころから、自然体であるように意識的に振る舞い、人と交流なさってきた部分もあるように感じます。これは、ご自身の御代で国民との関係をどう構築してゆくべきかーーという模索を続けてこられた証なのかもしれません」

 多賀さんが、強く印象に残った場面がある。

 侍従として仕えたのち、カナダ・バンクーバーの総領事として赴任した多賀さんは、2006年にバンクーバーを訪れた徳仁皇太子(当時)の案内役を務めた。

メキシコで開催された「第4回世界水フォーラム」ご臨席のための海外訪問で、カナダは飛行機の給油による立ち寄りであった。

 そうしたなかでも徳仁皇太子は、バンクーバーの在留邦人と懇談するなど、忙しく動いていた。ひと息ついたタイミングで、観光名所としても有名なグランビル・アイランドのマーケットまで足を延ばした。

 市場の店先には、果物や野菜、肉や大きな魚など生鮮食品が山盛りに積まれ、行きかう人びとで賑わっていた。

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「うっそぉー、と言われても困りますね」と茶目っ気たっぷりな徳仁皇太子