2017年、ナジブ首相の公式ツイッター。「公邸での昼食会で、徳仁皇太子さまとセルフィーを撮ることができた」と投稿された

 だが、侍従として皇室を見てきた多賀さんには、心配なことがある。天皇や皇族方の過酷な日常の務めが、ほとんど国民に知られていないことだ。

 たとえば天皇の新年は、宮中祭祀である「四方拝」で始まる。1日の夜も明けきらぬころから、国の安寧と国民の幸せを祈るのだ。

 多賀さんは侍従として平成の天皇の祭祀の場にも仕えてきた。

「皇祖神と天照大神などを祀る宮中三殿の建物の壁は、薄い板の壁です。出入り口に外気を遮断する戸はなく布がかけてあるだけです。天皇は祭祀の装束に身を包み、一畳ほどの畳の上で祭祀によっては明け方まで祈りを捧げます。冬の祭祀となれば、お仕えする私たちも、手足の感覚がなくなるほどの寒さでした。平成の陛下は、70代になっても祭祀に臨まれてきた」

 政治日程にも巻き込まれる。組閣となれば、皇居・宮殿で行われる大臣の認証式が深夜に及ぶこともある。

「日程が二転、三転したうえに、官邸から真夜中に電話がかかってきて、『明日、認証式ができるか』などと、問い合わせが来ることも珍しくありませんでした。皇室に迷惑をかけてはいけない、などといった配慮は感じませんでした」

 令和の陛下は、62歳の誕生日を迎えられたばかり。まだまだ、若くお元気だが、祭祀王として人びとに祈りを捧げ、国の象徴としての国事行為や公務を果たす天皇の務めは過酷だ。

 多賀さんはこう話す。

「さらに、コロナ禍でオンラインでの公務が中心となり、人びと直に触れ合う機会は、ほとんどない。ニューノーマルの価値観にシフトしたなかで、令和の天皇として国民とどう向き合われるのか。皇室はひとつの岐路にあるのかも知れません」

(AERA dot.編集部・永井貴子)

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