タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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「ウロギネコロジー」、聞いたことありますか? 私は昨年初めて知りました。ウロギネコロジー(Urogynecology)とは、ウロロジー(Urology=泌尿器科)とガイナコロジー(Gynecology=婦人科)をくっつけた造語で、女性の骨盤底筋に関連するさまざまな健康上の課題に、婦人科医、泌尿器科医、大腸肛門科医などが連携して治療にあたる仕組みだそうです。内臓を支えている骨盤底筋が緩(ゆる)むと、子宮や膀胱、直腸などが体の外に出てしまったり、排尿のコントロールが難しくなったりも。性器や排泄に関する受診は勇気がいるもの。例えば尿漏れと膣の緩みによる不調が同時にあると、現状では泌尿器科と婦人科を別々に受診しなくてはなりません。最近は日本でも「ウロギネ外来」などのある病院も増えてきたそうです。産後や更年期には骨盤底筋に関連するトラブルが増えるし、高齢になれば悩む人も多くなるので、包括的な対応をしてくれる科があるととても心強いですよね。
私は、更年期の体調管理で婦人科のかかりつけ医によく診察してもらいますが、膀胱炎になると同じクリニックの泌尿器科の医師にかかり、骨盤底筋や膣の状態は必要に応じて専門のクリニックで診てもらうことも。セカンドオピニオンで頼りにしている婦人科医の友人もいます。性器周りのことをなんでも相談できる「チームかかりつけ医」がいるのはとても心強いです。そう思うにつけ「婦人科」という古風な響きの名称が気になります。生理の悩みや閉経に伴う不調を抱える人は、ノンバイナリーの人やトランスジェンダー男性にもいますが「婦人」の表記に抵抗を感じて受診しづらいといいます。頼れる医師がいないのは不安だろうし、病気の発見も遅れてしまいます。素人頭ではいい案が思いつかないのですが、このことはもっと議論されてもいいと思うのです。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2022年2月28日号