それでも、弟かわいさに母親がこの遺言をゴリ押しした場合、Aさんは弟に対して遺留分(母親の遺産の4分の1まで)を請求できる。Aさんには1億3千万円のうち、3250万円を受け取る権利があるわけだ。
ただし、「こうしたケースでは、弟がAさんの遺留分を減らすために母親の財産を隠匿することがあるので注意が必要です」(橘さん)。
仮に今後、母親が認知症や要介護状態になったとしたら、「これだけの財産があるのだから、介護費用は当然、母親の預貯金で賄うべき。さらに、弟に“財産隠し”をされないように、多少コストはかかっても母親に対して成年後見制度を利用したほうがいいかもしれません」(同)。
(ライター・森田聡子)
※週刊朝日 2022年3月4日号より抜粋