提供・Kaoru Ng

 そんなカテリーナさんの父方の祖母はロシア人だ。かつてソビエト連邦の構成国家だったウクライナには、ロシア人の親戚や友人を持つ人が少なくない。

「ロシアの政府は好きではありませんが、ロシア人に対しては好き嫌いの感情は特にない。それに、東スラブ人同士であるウクライナ人とロシア人が殺し合いをするというのは、正直想像がつきません」

 例年であればこの時期には、北東部ハリコフ近郊に住む祖母の別荘へ行き、サウナなどを楽しむというカテリーナさんも、今年は衝突を懸念して旅行を控えた。

「少し前から、航空券の価格をチェックし、ポーランド入国のための必要書類を確認するなど、一時避難プランを考えるようになりました」

 また、カテリーナさんの自宅の最寄り駅であるアルセナーリナ駅は深さ105・5メートルある世界で最も深い地下鉄駅だ。有事の際の地下シェルターにもなるため、避難ルートを確認したという。

 緊張感を高めながらも続いていた日常は、ロシアの侵略により急変した。14年から続くウクライナ東部紛争の死傷者は1万3千~1万4千人に上るといわれる。プーチン大統領は民間人の犠牲を意に介さない。今回の攻撃でも、すでに多数の死者が出ているという。戦闘を一刻も早く終わらせ、さらなる状況悪化を回避すること、そして国際秩序を公然と破壊するロシアに対してどのような手が取れるのか。日本を含む国際社会がいま、問われている。

(ライター・大井美紗子、鵡川文治、編集部・川口穣)

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