■過去最大の規模 警備も総動員か
こうなると、極めて重要なのが警備体制だ。警察庁OBの平沢勝栄・元復興相は「サミットなどでは半年~1年前から警備計画を立てる。今回はそこまでの時間はないが、これまでの経験の蓄積を総動員して万全を期してほしい」と注文をつける。
安倍氏の銃撃事件は警備体制に問題があったとされ、警察当局による検証・見直しが進む。警視庁関係者はこう語る。
「2019年の天皇陛下の即位の礼や、これまでの首相経験者の内閣・自民党合同葬などを念頭に準備を進めています。中でも00年に日本武道館で行われた故小渕恵三元首相の合同葬は、現職で病に倒れて急逝したこともあり、当時のクリントン米大統領や韓国の金大中大統領ら150以上の国・地域から要人が参列。式典当日、警視庁は約1万人を動員して警備に当たった。今回はそれを上回る過去最大の規模になるでしょう。他県警などからの応援も検討しています」
約3億円ともいわれる国葬費用は全額税金。ただでさえ異論がある国葬実施に、ある自民党ベテラン議員は「もう警備の失敗は許されない。日本警察の矜持を示してほしい」と強調した。
ところで、岸田政権は国葬の前の9月上旬に党役員人事と内閣改造を控えている。安倍氏亡き今、岸田首相がフリーハンドに近いかたちで人事を断行するという観測もあるが、前出の政府関係者はこう予測する。
「保守の『岩盤支持層』をにらみ、安倍派から福田達夫総務会長を外し、安倍氏の秘蔵っ子、萩生田光一氏の党四役入りをのむのではないか。麻生派、岸田派、茂木派、安倍派の主流派体制で政権を運営することになる。場合によっては、非主流派ながら党内最高実力者の一人にのし上がった菅義偉前首相を『副総理兼脱炭素相』で起用するウルトラCも検討されており、文字どおり総主流派体制で安倍氏なき難局を乗り切る考えのようだ」
本誌・村上新太郎
※週刊朝日 2022年8月12日号