こうした党内対立を生みかねない動きが広がるのを防ぐには「安倍氏を国家として顕彰し、神格化するしかない」(自民党幹部)というわけだ。

 あらためて、この発言の真意を下村氏に聞くと、「挑発的な発言をしたわけではなく、安倍さんが亡くなったからといって、最大派閥の安倍派が割れることは絶対ないと思いますし、しっかり岸田総裁も党内的バランスを考えて人事をしてもらいたいということ」と語った。

 また、事件を機に多くの自民党議員が旧統一教会の関係団体のイベントに関わったり、選挙の際に協力を受けたりしていたことが報じられており、「岩盤層でない一般党員などから党本部に抗議の電話が相次いでおり、国葬には一般党員の支持をつなぎ留める狙いもある」(前出の幹部)という。

 首相周辺によると、首相が国葬に転じた大きな理由はもう一つある。首相は周辺に「国葬になれば弔問外交ができる」と意欲的に語ったという。

 安倍氏は憲政史上最長の政権を樹立。第2次政権発足以降、80カ国・地域を訪問し、各国首相と信頼関係を築いた。国葬にはトランプ前米大統領が参列を検討していると報じられるなど、各国要人の集結が予想される。

「約6千人が参列した吉田元首相の倍近い、1万人以上が弔問に来るでしょう。葬儀委員長としてつつがなく国葬を成功させれば、岸田氏の名前は世界により知れわたる」(前出の政府関係者)

 外務省は省内に「国葬儀準備事務局」を設置し、受け入れに万全を期している。外務省関係者によれば、「内政で苦境にあるバイデン米大統領は来日しないとみられるが、ハリス副大統領やオバマ元大統領の名前が取り沙汰されている。他にもマクロン仏大統領、メルケル前独首相、アルバニージー豪首相、インドのモディ首相らの訪問が想定されている」という。

 ロシアのプーチン大統領には通知は送るが、事実上の入国禁止対象のため訪日はない。中国は、自民党が台湾の蔡英文総統の参列を求めていることへの反発が予想され、「どのレベルを派遣するか慎重に検討するだろう」(前出の外務省関係者)。

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