■恩人を事故で亡くし憔悴

“氷川きよし”という芸名はビートたけしが名付け親というのは有名な話だが、これは話題作りのためで、実際は事務所の会長(現在は故人)が名付けたとたけしが明かしている。デビュー当時からの育ての親だった会長は10年前に不慮の事故死を遂げたが、以降、氷川は不安にさいなまれて突然絶叫したり、休日に泥酔してしまうなど心のバランスを崩すことが多くなったと語っている。相談できる相手をなくし、孤独を抱えながらこの10年間を走り続けてきたため、限界を迎えたのかもしれない。

 6月からは、7回目となる恒例の「氷川きよし特別公演」がスタートする予定で、今回は4大都市の劇場を回るという前例のない規模だった。

「声帯ポリープが発表されたので、公演はどうなるか未知数ですが、つい先日、氷川がジャンヌ・ダルクに扮したメインビジュアルが解禁になったばかり。最後の座長公演で時代劇をせず、ヨーロッパが舞台の芝居を選んだことが象徴的ですよね。ジャンヌ・ダルクに扮したその姿はタカラジェンヌばりの圧倒的な存在感ですが、これは本人が強く望んだものだと話しています。活動休止前に、念願かなってフランスの国民的ヒロインを演じられるわけで、氷川さんも相当気合が入っているようです。この10年、氷川さんのなかで最も変わったのがビジュアル。美への追究がすさまじく、いつのまにかジェンダーを超えた存在になりつつあります。その集大成がこの公演になるではないでしょうか」

 TVウオッチャーの中村裕一氏は、氷川の今後についてこう分析する。

「氷川さんは大先輩ばかりの演歌界で、次世代の担い手として長きに渡り活躍してきました。稼ぎ手を失う事務所やレコード会社の事情、デビューから応援してきたファンの気持ちもあるとは思いますが、これまで全力で頑張ってきたのですから、温かい目で見守ってあげたいですね。昨年4月から出演している『趣味の園芸』では、植物を相手に毎回とても生き生きした表情を見せているのが印象的です。どんなに気丈に見えても、彼も一人の人間。そしてアーティストには充電期間も大切です。必ずしも演歌に縛られる必要はないし、どんな形でもいいですから、ぜひ心身ともにしっかりとリフレッシュしてもらい、また私たちの前に戻ってきて欲しいですね」

 多くの人が、きーちゃんの活動再開を願っているはずだ。(藤原三星)

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