患者家族の多くの方に共通する困りごととして、医療費や合併症のことを教えてくれました。子どもの身体にがんが見つかり、成長期に抗がん剤や放射線などの治療を受けると、一部の患者さんには内分泌系や臓器、婦人科系などに、晩期合併症と呼ばれる症状が出ることがあります。中には小児科では対応できない分野もあり、成人科との連携が必要です。通い慣れた病院ではなく、新たな場所で治療を開始することもあるようです。
■助成が切れたら
当然ですが、受診するたびに医療費がかかります。元々の疾患のフォローに加え、合併症がある場合はそのための受診も必要です。合併症の症状はさまざまですが、定期的な通院や日常生活の支障があっても、いわゆる『障害』の基準には当てはまらないことが多く、生活が成り立たない程の最重度にならないと、公的な制度は利用できません。助成が切れた医療費はいずれ、闘病を続ける子ども本人が負担していくことになるのです。
20歳になったからといって、病気が突然治るわけではありません。でも、適切な治療を続ければ、みーちゃんの娘さんのように、夢を持って学び続けることもできます。彼女の話を聞いていて、医療費助成は「切れ目のない支援」の大きな課題のひとつだと思いました。限られた財源でどんな支援ができるのか、検討が続くことを願います。
■医療の移行の課題
医療の移行には、送り出す小児科側だけでなく、受け入れる成人科の理解も不可欠です。一般的に小児科を卒業する年齢は15歳(中学3年生の年度末)ですが、医療的ケア児はまだ大人と同等の体格になっていないことも多く、子どもの採血や点滴などの処置に慣れていない診療科の場合は敬遠されてしまうケースがあります。小児科を卒業して、在宅医を探そうとした時に、受け入れ先が見つからないという話もよく聞きます。
子どもから大人になり、地域の中で年齢を重ねていくことは、現代の社会ではごく当然のことです。そして子どもが年を重ねるのと同じように、保護者(介護者)の年齢も上がっていきます。地域で連携し、支え合う力を持つことがとても大切であり、「切れ目のない支援」には、子どもだけでなく家族全員の支援を含んだ視点が重要だと思います。
多くの病院には地域連携室や支援センターという名称の部署があり、ソーシャルワーカーに制度や経済的なことを相談できるシステムがあります。院内の連携室の存在は、あまり知られていないことも多いのですが、生活に関することを何でも気軽に相談できる場所です。「切れ目のない支援」を確実に実現していくために、困った時にはひとりで抱えこまず、ぜひソーシャルワーカーを頼ってほしいと思います。
※AERAオンライン限定記事
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