期待を裏切ったのは、新助っ人だけではない。来日後、大洋、巨人の8年間で3割以上5回、30本塁打以上3回と安定した成績を残したジョン・シピンも、日本でのラストイヤーは、典型的な“オープン戦限定ヒーロー”だった。
80年、巨人移籍3年目のシピンは、3月1日のロッテ戦、同15日の近鉄戦、同23日のヤクルト戦と3度にわたって2打席連続本塁打を記録。打率4割、7本塁打という抜群の成績を残し、「オー(王貞治)さん、ナガシマ(長嶋茂雄監督)さんと過去2年一緒にやってきた。今年はそれが開花する時期かもね」と3年ぶりV奪回のキーマンになることを誓った。
ところが、いざシーズンが始まると、持病の腰痛や若手の篠塚利夫の台頭で出場75試合にとどまり、成績も9年間でワーストの打率.224、9本塁打。結果的に長嶋監督解任の一因になったばかりでなく、シピン自身も翌年の契約を残して退団帰国する羽目になった。
新旧どちらの助っ人も、オープン戦の成績はあまりアテにならないようだ。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。