タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【写真】広島で平和を祈る集いに参列し、祈りを捧げるウクライナ出身の男性
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お子さんと、ウクライナ情勢についてどんな話をしていますか。ロシアが侵攻してからたった数日で、ウクライナの人々は火炎瓶を手作りし、何十万人もが家を追われています。半月前に誰がそのような生活を想像したでしょうか。本当にこんなことが、たった数日のうちに起きてしまうのかと胸が潰(つぶ)れる思いです。これまでも世界各地でこうして戦争が始まって、多くの人が巻き込まれていたのだと、自分の想像力の無さを痛感しました。互いに会ったこともない誰かの息子・娘たちが殺し合い、多くの人を巻き込む戦争の惨(むご)さに言葉を失います。
息子たちには、私たちにも今すぐできることが三つあると話しています。「人道支援機関に寄付をすること」「誤った情報を拡散しないこと」「ロシアの政権とロシアの人びとを一緒にしないこと」です。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、これから数百万人規模にも達する恐れのあるウクライナ難民を支援するため、ネットで寄付を募っています。継続寄付以外に都度寄付も可能で、千円から寄付することができます。税控除の対象にもなります。
ネットで目にした情報は、それがとても胸の痛むものであっても、まずはどこが情報源であるかを確かめ、必ず元記事を読むようにしましょう。友人が善意で教えてくれた情報を、すぐに誰かに広めない。そして複数の媒体の記事を読んで、少なくとも現時点で事実と思われるものは何かを慎重に判断すること。
この戦争を遂行しているのは、ロシアのプーチン大統領が率いる現政権です。反対しているロシア人はたくさんいます。政権への怒りをロシア国民への敵意に変えないことが、極めて重要です。憎悪と暴力の応酬はそうやって瞬(またた)く間に広がってしまうからです。家を追われた人を助ける、嘘や憎悪を増幅しない。今すぐ個人ができるアクションです。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2022年3月14日号