「グレイヘアがブームになって、大人たちは自由になった面があるのかもしれません。私と同世代で現役を続けているモデルさんたちで仕事が減ったという人はむしろ少ないくらい。たしかに外見は20代のモデルに負けますが、経験や知識では負けません。シワやシミなんてみみっちいことはどうでもいいので、内面を磨いてオーラを発していけ! そんな気持ちで、必要とされる限りモデルの仕事を続けたい」(毛利さん)

毛利さんの所属事務所にはほかにも現役60代モデル仲間がいる。その一人、18歳からこの仕事をしている幸田京子さんは「昔は自然体で体形維持ができましたが、今は努力しないと現役を続けられない。マスク生活で表情筋が衰えないようにラップを始めました。目標はSKY‐HI(笑)」、レディースファッション誌や企業の美容・健康系CMにも出演する池上恵子さんは「食事、運動、筋トレ、美術館通いなどで体の中と心の健康美を作り、今後も仕事を続けていきたい」と話す。

モデルにとってスタイルとは体形のことだけではなく、生き方そのもの。それを磨くための努力を欠かさないから、見る人の目標であり続けられる。毛利さんはNHKカルチャーで「ビューティ」「姿勢」「ウォーキング」の講師も務めている。
「日本では年を取ったらおとなしくするべきという世間の目があり、自分の主張を抑えてしまいがちですが、せいぜい生きてあと20年。60代は、本当は自分の着たいものを着て表現する年齢だと私は思います」(毛利さん)
60代女性の輝きが、ちょっと元気のない日本を元気にするきっかけになるかもしれない。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2022年3月25日号