ファッション誌「素敵なあの人」の撮影風景
ファッション誌「素敵なあの人」の撮影風景

 岩井さんの活躍の背景には、同世代の女性たちのあふれる“オシャレ欲”がある。「素敵なあの人」の神下敬子編集長は、創刊の理由をこう説明する。

ファッション誌は読者の世代ごとにすみ分けがありますが、60代をターゲットにしたものはありませんでした。以前私がインテリアの実用本を作ったときに取材した50代、60代の女性たちの暮らしを見て、年代ごとの素敵さがあることに気づきました。ここに市場があるのではないかと考えて、まず60代の大人服のムックを作ったんです。それが発売3日で重版になり確信しました。季刊のテスト号から始めて、試行錯誤の末、『素敵なあの人』を創刊しました」

 それが大当たりした。神下編集長は続けて言う。

「今の60代女性は昔よりずっと元気で、友達と旅行したりランチに出かけたり、目が外に向いている。となるとオシャレは不可欠。もともとバブル期に青春時代を過ごした世代です。年寄り臭い服ではなく年相応のオシャレな“大人服”を着たいという思いがある。でも、そういう服を着て広告や雑誌に載るのは若いモデルばかり。それでは60代の女性読者のオシャレの参考にはなりません。だからこそ、『素敵なあの人』では表紙を飾っていただいている結城アンナさんや岩井さんたちのように、読者と等身大の60代モデルの存在が大切なんです」

「素敵なあの人」創刊に呼応するように立ち上げられたブランドが「ウタオ」だ。「グローバルワーク」などのブランドを展開するアパレル大手のアダストリアが手掛けた。

「40代、50代女性のブランドはあるのに、60代向けはありませんでした。60代女性は買いたい気持ちがあっても着たい服が見つからない“オシャレ難民”だった。こうした課題を解決しようと、60代女性向けの新ブランドを立ち上げたのです」(ウタオのプレス担当者)

毛利理美さん
毛利理美さん

 新たな市場が勃興しつつある中、モデルたちも引く手あまただ。66歳の現役ファッションモデルで『いくつになっても、美しく、いさぎよく生きる』の著書もある毛利理美さんは、「60代でもモデル需要は多い」と言う。10代からモデルを始め、バブル期の華やかだった時代の業界を彩り、今も現役バリバリで雑誌や広告のモデルを続けている。

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