AERA2022年3月21日号より
AERA2022年3月21日号より

■かけ合わせで幅広がる

 21年に独立。社会課題解決の手段として学んだのが、ファンドレイジング(資金調達)だ。NPOが主宰するスクールに通い、体系的な知識を身につけた。

「マーケティングで培った気持ちを先読みするインサイト力やいろいろな人を巻き込む力、人事で学んだコミュニケーションなどは比較的そのまま役立てられているし、ファンドレイジングの知識をかけ合わせることで力になれる幅が広がりました」

 一方、ソーシャルセクターに移ったことで戸惑いもあったという。例えば、短期的な目標を立てて事業を推進するビジネスセクターと比較し、ソーシャルセクターでは長期間かけて社会課題に向き合う。ビジネスでは競合先に勝つために取引先や人材を囲い込む傾向が強いが、ソーシャルは逆にオープンだ。

「ファンドレイジングの知識を身につけるのがアプリだとすると、時間軸や考え方はOSに当たります。リスキリングでも、アプリと同時にOSのアップデートが必要だと思います」

 変化の時代の中では、自分を磨き続けなければ置いていかれてしまう。そんな空気が、スキリングをさらに活性化させている。(編集部・川口穣)

AERA 2022年3月21日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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