「片付け下手の私がきれいに片づけられるようになって業務効率が上がったほか、ストレスもなくなって仕事に向き合う心持ちが変わりました。それが職場全体に波及して、大げさではなく働き方改革にも繋がりました」
新たにいま学ぶのがメンタルヘルス・マネジメントだ。2020年度、精神疾患で休職する公立学校教職員は5180人。五十嵐さん自身もメンタルバランスを崩したことがある。
「そのときは周囲の理解もあって回復できました。将来管理職になるつもりですが、少なくとも自分の周囲にいる人は支えられるようになりたいんです」
盛り上がりつつあるリスキリングの波。前出の大金さんが勤めるSchoo代表の森健志郎さんは、「社会人の学びに本気の波がやってきた」と語る。19年時点で約43万人だった同社の会員数は21年末に70万人を超えた。コロナ禍でテレワークが増え、学びに充てられる時間が増えたこと、社会の変化の中で学ぶ必然性が高まっていることが影響しているのだろう。
「学びの波は個人にも社会にも変化をもたらします。個人の側から見ると、学ぶことが挑戦の意欲になり、人生を豊かにしてくれる。例えば起業に踏み切る人も増えるでしょう。そして、社会全体のリテラシーも高めます。起業する人を応援し、変化を後押しする社会になれば、イノベーションが起こって社会課題が連鎖的に解決していく。学びはそのふたつをつなぎ合わせるものだと思っています」
23年間の広告会社勤務を経て21年に独立した男性(48)は、会社員時代の前半10年強をマーケティング部門で過ごした。商品やサービスのPR戦略を考える仕事だ。そして後半は人事部門に移り、社員個々人や部署を対象にして組織活性化を目指す業務を担った。マスが対象のマーケティングから、リアルな反応が伝わる人事へ、大きなパラダイムチェンジだった。
人事部では組織にフィットできずに不調をきたしたり、様々な課題を抱える社員と向き合い、伴走することが多かったという。その経験から男性はキャリアチェンジを考えるようになった。
「私がいたような大企業でも厳しい状況に置かれる人がいる。社会にはもっと助けを必要とする人がいるはずです。そんな人に最初に手を差し伸べる『ファーストフォロワー』になりたいと考えるようになりました。ビジネスセクターから、社会課題の解決を目指すソーシャルセクターに移ろうと決めたんです」